不安症・パニック

不安症・パニックanxiety panic

不安症(不安障害)とパニック障害は、現代社会において多くの人が経験する可能性のある心の病気です。
現代社会は多くのストレスに満ちており、誰でもふとした瞬間に不安障害やパニック障害を発症する可能性があります。
発症の主な原因は明確ではありませんが、心的ストレスや身体的変化(妊娠や加齢など)が要因とされています。
不安自体は自然な反応で、危険を回避するために役立つこともありますが、過剰な不安がコントロールできなくなると、
生活に深刻な支障をもたらす「不安障害」と呼ばれる状態に陥ります。
この不安障害の中には、対人関係や日常的な場面で不安を感じる「社会不安障害(SAD)」や、
突然の身体的な発作を伴う「パニック障害」をはじめ不安障害に分類される疾患が複数ありますが、
いずれも不安が極度に高まりコントロールできなくなる病気のため、
早めに心療内科や精神科に相談し、カウンセリングや薬物療法などの適切な治療を行うことをおすすめします。

不安症・パニック

不安症・パニック

不安症(不安障害)に
ついて

不安症(不安障害)は、日常生活に支障をきたすほどの過剰な不安や恐怖を感じる状態を指し、
「社交不安障害(SAD)」「全般性不安障害(GAD)」「強迫性障害」「恐怖症」など様々な疾患が存在します。
いずれも日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性がありますが、
適切な治療とサポートによって症状を緩和・改善することができます。
症状が深刻化する前のできるだけ早い段階で、心療内科や専門家へ相談することが、
不安を軽減し、より良い生活を取り戻す第一歩となります。

社交不安障害(SAD)

社交不安障害(SAD)

社交不安障害(SAD)は、以前は「赤面症」や「あがり症」など、性格や気持ちの問題として誤解されてきましたが、適切な治療によって改善が期待できる心の病気です。
主な症状は、人前でのスピーチや会議での発言、また電車や繁華街といった人の多い場所で、強い不安や緊張を感じることです。
これにより、人と話すことや集団の中にいることを避けるようになり、結果として日常生活や社会活動に深刻な支障をきたすことが少なくありません。
症状は7〜8歳ごろから現れ、特に思春期に悪化することが多いとされています。

SADの患者は、人前での緊張や不安を隠そうとするあまり、かえって不安が強まるという悪循環に陥りがちです。
特に日本では、場の空気を読むことが重要視される社会的な同調圧力が強いため、SADの患者数が多く、うつ病やアルコール依存症に次ぐ患者数を抱える心の病気であり、不安障害の中では最も多い疾患です。
そのまま治療を受けずに放置すると、就職や結婚など社会的な場面での適応が困難となり、ひきこもりに繋がるケースもあります。また、適切な治療を受けていない場合、自傷や自殺のリスクも高くなることも指摘されています。

社交不安障害(SAD)の
原因

  • 環境要因
  • 心理的要因
  • 生物学的要因(脳科学の異常)
  • 遺伝的要因

社交不安障害(SAD)の原因は、脳内の神経伝達物質の不均衡・環境要因・性格的な傾向・過去の経験・遺伝的要因など、複数の要因が重なり合って発症すると考えられています。
特に、脳内のセロトニンやドーパミンといった物質は、意欲や感情の安定に深く関わっており、これらのバランスが崩れることで不安や恐怖を過敏に感じやすくなります。
こうした神経的なアンバランスが、社交不安障害の主要な原因の1つと考えられています。
加えて、内向的で慎重な性格、完璧主義や真面目で自分に厳しい性格の人は、特にSADを発症しやすい傾向があります。

こうした性格の人は、他人からの評価を気にするあまり、人前での緊張や失敗への恐怖を過剰に感じやすくなります。
また、家庭環境も大きく影響し、幼少期に厳格なしつけを受けて育った場合、自信が持てずに他人の視線や評価に対する不安が強くなることがあります。
逆にあまり叱られることがなく育った場合、社会的な批判に対する耐性が低く、厳しい評価がトラウマとなってSADを発症するケースも見られます。
このように、SADは単一の要因だけでなく、脳の働きや性格、環境の影響が複合的に絡み合って発症する病気です。
そのため、適切な診断や治療が必要であり、症状を感じた際には、専門医の診断と治療を早めに受けることが大切です。

全般性不安障害(GAD)

全般性不安障害(GAD)

全般性不安障害(GAD)は、日常生活の様々な出来事や活動に対して、過度な不安や緊張を抱き続ける状態です。
具体的な原因が特定できず、仕事や家族の健康、金銭問題など、多岐にわたる事柄について常に不安を感じます。
これに対し、社交不安障害(SAD)は、人前に出る状況や対人関係に限定して不安が生じるのが特徴です。
GADの最大の特徴は、不安が慢性的で毎日のように続くことです。
常に漠然とした心配が消えず、これが精神的な苦痛だけでなく、慢性的な身体的疲労感・集中力の低下・睡眠障害・筋肉の緊張など、身体的な影響も引き起こします。
また、日常の些細なことにも過剰に「何か悪いことが起こるのではないか」といった漠然とした恐怖を抱きがちです。

GADには心療内科や精神科での薬物療法や認知行動療法が有効で、適切な診断と治療を受けることで、生活の質を改善することが期待できます。

強迫性障害

強迫性障害

強迫性障害とは、自分の意思に反して、強い不快感・不安感(強迫観念)が繰り返し浮かび、その不安を解消するために特定の行動(強迫行為)を繰り返してしまう状態を指します。
この強迫観念と強迫行為のサイクルが止まらず、日常生活や人間関係、社会生活にに支障をきたしてしまうことが特徴です。
例えば、「手が汚れているのではないか」と何度も気になり(強迫観念)、その結果、1日に何十回も手を洗ってしまう(強迫行為)ことが挙げられます。
本人もおかしなことをしているという自覚はしていても、行動を抑えられず、結果として精神的に苦しむことが少なくありません。
強迫性障害の症状や行動は人によって異なり、場合によっては周囲を巻き込んでしまい、友人や家族などの人間関係にヒビが入ったり、社会生活に大きな影響が出ることもあります。
また、この障害は他の精神疾患、例えば統合失調症やうつ病に伴って現れることもあります。適切な治療を受けることで、生活の質を向上させることが可能です。

恐怖症・・・限局性恐怖症
(特異的恐怖症・単一恐怖症)

恐怖症

限局性恐怖症(特異的恐怖症・単一恐怖症)は、不安障害の1つで、特定の対象や状況に対して過度な恐怖や不安を感じる状態を指します。
例えば、高所恐怖症や動物恐怖症などがこれにあたります。
この恐怖症は主に10歳までに発症し、多くの場合、発症のきっかけははっきりしないものの、動物に襲われるなどの特定の体験が引き金になることもあります。
日本での有病率は約3%と高く、特に女性に多く見られます(男女比は女性が2倍)。恐怖や不安は対象に直面した際に急激に高まり、場合によってはパニック発作を引き起こすこともあります。

恐怖症は、恐怖の対象や状況の違いにより5つのタイプに分類され、これには「動物型」「自然環境型(高所や嵐など)」「血液・注射・負傷型」「状況型(狭い場所や飛行機など)」「その他型」が含まれます。
これらの恐怖症では、対象や状況を避けるために回避行動が見られ、避けられない場合には強い苦痛を感じながら耐え続けることになります。
この恐怖や不安感は、実際の危険性と比べて不釣り合いに大きく、社会生活や職業生活に深刻な影響を与えることがあります。
限局性恐怖症の症状は6か月以上続き、慢性的になることが多いですが、特に小児期に発症した場合は自然に寛解することもあります。

不安障害は下記のような
症状が現れます

不安障害は、心と体それぞれに影響を及ぼし様々な症状を引き起こします。
ご家族や周囲の方は、不安障害に悩む方に対して、「そんなに心配しなくても大丈夫」と
訴えに対して軽く考えてしまうことがあるため、自分自身が強い不安やストレスを感じてしまうケースが多く見られます。
これらの症状が現れた際は、つらさを我慢せず、まずは当院にご相談ください。

心の症状

  • 些細なことが気になり、取り越し苦労が多い
  • 常に緊張してリラックスできない
  • 気持ちがそわそわする、いらいらして怒りっぽい
  • 根気がなく疲れやすい
  • もうろうとする、自分の体ではないような感じ
  • 不安や恐怖を度々感じ、コントロールできない
  • 物事に集中することができない
  • 不安や恐怖を避けるような行動をとってしまう

体の症状

  • 頭痛、頭重感、頭の圧迫感
  • 筋肉の痛みやこわばり、緊張感、しびれ感
  • 眠れない
  • 動悸がする、全身に脈拍を感じる
  • 便秘または下痢、頻尿、吐き気などの消化器症状
  • 息切れや息苦しさが突然出て苦しく感じる
  • のどが詰まる感覚、のどの違和感
  • めまい、ふらつき、頭が揺れる感じがする

不安障害は
早期の治療が大切です

不安な気持ちが長期間続き、恐怖を感じる状況や行為、相手を避けることで日常生活に支障をきたし始めた場合は、治療が必要なサインです。
特に社交不安障害(SAD)は、以前は性格の問題と軽視されがちで、適切な治療を受けていない方も多い疾患ですが、近年では研究が進み、効果的な治療法が確立されています。
薬物療法や認知行動療法などの心理療法を約1年間続けることで、90%以上の方が回復するとされており、SADは性格や能力の問題ではなく、治療によって生活の質(QOL)を大きく向上させることが可能です。

適切な治療を受けることで、受験・就職・仕事・恋愛・結婚・子育てなど、人生の重要な場面で本来の能力を発揮するためにも、症状に気づいたら早期に専門の医師に相談7両を開始することが重要です。

下記に当てはまる方は、
不安障害、または予備軍の
可能性があります

下記に当てはまる方は、不安障害、または予備軍の可能性があります
  • 人前で緊張してしまい、上手く話すことができない
  • 他人の視線が怖い
  • 予定が近づくとソワソワしたり、体調が悪くなる
  • 人前で字を書こうとすると手が震える
  • 不安、緊張が強くて会社や学校を休んでしまう
  • 怖くて電話に出ることができない
  • めまいや吐き気が続き、検査をしても異常がない
  • 重大なことも些細なことでも心配や不安を感じる

不安障害の治療について

社交不安障害の治療は、薬物療法を中心に、認知行動療法などの心理療法を適切に組み合わせて行います。
これらの治療は、恐怖や不安を軽減し、恐怖を感じる状況を避ける行動を減らすことを目的としており、
最終的には、患者の生活の質(QOL)を向上させ、その改善された状態を長期的に維持することを目指します。

藥物療法

藥物療法

不安障害ではうつ病と同様に脳内神経伝達物質のセロトニンが強く関係していると言われており、不安障害の治療では、セロトニン分泌を調整して、不安や焦燥感、不眠、気分の落ち込みなどの症状改善につなげることができます。
一般的には、脳内神経伝達物質のセロトニンを調整するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、セロトニンとノルアドレナリンの両方を調整するSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬、抗不安薬やβ遮断薬などが使用されます。
これらにはそれぞれ多数の種類があり、薬剤との相性といった問題もあるため、個々の症状や体質に合った薬をふさわしい量だけ飲むなど、患者さんの体質や症状に合わせた慎重な処方と経過観察が必要です。また症状によっては漢方薬が有効な場合もありますので、まずは医師にご相談ください。

また、使用しているお薬によっては急に中断することで、不安の増加・不眠・頭痛・めまい・イライラする等の症状が出てしまうことがあるため、症状が改善して薬を減量していく際には、医師としっかり相談しながら薬を調節していくようにしてください。

心理療法

心理療法

対人恐怖を軽減するための代表的な治療法に「認知行動療法」があります。
これは、不安や恐怖を引き起こすネガティブな思考パターンや感情の偏りを修正し、客観的な視点で状況を捉えられるようにサポートする治療法です。
社交不安障害を抱える方は、長い間、思考や感情がネガティブな方向に歪みやすくなっていますが、認知行動療法ではまずその歪みを自分で認識し、気持ちをコントロールできるようにサポートしていきます。

治療の一環として、不安を引き起こす状況を擬似的に再現し、その状況に少しずつ慣れていくトレーニングも行われます。
例えば「エクスポージャー」という方法では、恐怖を感じる状況に段階的に身を置き、不安が自然に軽減されるまで繰り返し体験することで、徐々に恐怖を和らげます。
また、対人スキルの向上を目指す「ソーシャル・スキルトレーニング」では、対人コミュニケーションの技術を向上させるために、人との接し方や視線の送り方・会話の仕方などを学び、人とのコミュニケーションをよりスムーズに、自然に交流できるよう訓練を行います。
これらのアプローチによって、恐怖を感じる場面でも自分で不安をコントロールできる力を養い、日常生活や社会生活における対人関係をよりスムーズに進められるよう改善を目指していきます。

社交不安障害の予後

社交不安障害(SAD)は、適切な治療で改善が見込める病気ですが、治療の開始が遅れると症状が悪化し、慢性化しやすくなります。症状が進行すると、うつ病やアルコール・薬物依存といった他の精神疾患を併発するリスクも高まり、日常生活での支障が大きくなるため、早期に専門医の診察を受け、薬物療法や認知行動療法といった適切な治療を受けることが大切です。
治療が進み、症状が軽減してきたら、少しずつ自己肯定感を高めながら外の世界と向き合い、
社会技能やコミュニケーション能力を徐々に向上させていけるよう段階的に回復への道を歩んでいきましょう。
人前での緊張や不安は誰にでも起こる自然な反応であり、恥ずかしいことでも異常なことでもありませんので、
症状を感じてしまった場合は、お気軽に当院までご相談ください。

社交不安障害の予後

パニック障害について

パニック障害について

パニック障害は、時間や場所を問わず突発的にパニック発作が起きる病気です。
これは、不安や恐怖を引き起こすネガティブな思考パターンや感情の偏りを修正し、客観的な視点で状況を捉えられるようにサポートする治療法です。
ある日突然、理由もなく心臓が激しく鼓動し、息苦しさやめまい・吐き気・過呼吸・手足のしびれ・発汗・震え・ふらつきといった身体的な異変が現れ、「このまま死ぬかもしれない」と感じるほどの強い恐怖に襲われるのが特徴です。
発作は数分から数十分続くことがあり、発作が収まった後も「また発作が起きたらどうしよう」という強い不安(予期不安)が生まれ、広場恐怖やうつ症状に繋がることもあります。
パニック障害は決して珍しい病気ではなく、日本人の100人に1~2人程度が一生のうちにパニック発作を経験するとされ、特に20〜30代の女性に多く、男性の2~3倍の発症率とされています。
また、パニック障害は、非定型うつ病や社交不安障害・双極性障害・うつ病・アルコール依存症・自律神経失調症・身体表現性障害など、他の精神疾患と併発することもあるため、自覚症状がある場合や、家族や周囲の人が気づいた場合は、早期に専門的な治療を受けることが大切です。

  • パニック発作

    パニック発作は、突然予期せぬタイミングで発症し、胸の痛み・動悸・息苦しさ・めまい・ふるえ・発汗など強い身体的な異常が現れます。時には「自分が自分ではないような感覚」や「このまま死ぬのではないか」「気が狂うのではないか」と感じるほどの恐怖が伴うため、発作時に救急病院へ駆け込むケースも少なくありません。発作は通常数分から数十分続きますが、強い場合は数時間に及ぶこともあります。

  • 予期不安

    予期不安とは、パニック発作を繰り返すことで、発作が起きていない時にも「また発作を起こすのではないか」という恐怖を抱く状態です。パニック発作が生命に関わる呼吸や心臓の異常に関連するため、強い不安感を持ちやすくなります。この不安が続くと、外出を避けたり、会社や学校に行けなくなることもあり、パニック障害の人の多くが、発作が起きていない時でも予期不安を感じ、日常生活に支障をきたす傾向があります。

  • 広場恐怖

    予期不安が進行すると「広場恐怖」を引き起こすことがあります。広場恐怖とは、万が一パニック発作が起きたらすぐに逃げられない場所や、助けを求めれらない状況に対して強い恐怖を感じ、飛行機や電車などの公共交通機関や、トンネル・エレベーター・窓のない部屋などの閉鎖空間を避けるようになります。その結果、一人で外出できなくなるなど、日常生活や社会活動に大きな支障が生じることがあります。

パニック障害の原因

  • 遺伝的要因
  • 生物学的要因
  • 心理社会的要因

パニック障害の原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因、生物学的要因、心理社会的要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

遺伝的要因としては、家族にパニック障害や他の不安障害を持つ人が多い場合、発症リスクが高くなる可能性があると言われています。遺伝的な素因が脆弱性をもたらし、環境要因と相まって発症する可能性があります。

生物学的要因では、脳内神経伝達物質の不均衡が関与しており、特にセロトニン・ノルアドレナリン・ノルエピネフリンのバランスの崩れがパニック発作を引き起こすとされています。パニック障害のある方は、大脳・大脳辺縁系・青斑核といった脳内ネットワークに異常が見られることが多く、大脳でのセロトニンの過剰分泌が回避行動を引き起こし、大脳辺縁系でのセロトニンの分泌異常が強い不安を生じさせます。
青斑核が誤作動を起こすことで、危険な状況がない場合でもパニック発作を引き起こすことがあります。
また、延髄にある中枢化学受容器が二酸化炭素の過剰を感知し、これが扁桃核を刺激して不安や恐怖反応を引き起こすこともあります。

心理社会的要因としては、ストレスや心的外傷、社会的な問題が影響を与えることがあります。
人生における重大な変化を伴う際やストレスフルな状況が、パニック発作のトリガーとなることがあり、これらの要因が脳内の神経伝達物質に影響を与え、発作を引き起こす可能性があります。

これらの要因が複雑に絡み合い、パニック障害の発症や悪化に寄与していると考えられています。

下記に当てはまる方は、
パニック障害、または
予備軍の可能性があります

心の症状

  • 自分はこのまま死ぬのではないかという恐怖
  • 自分が自分ではないように感じる
  • 意識を失うような恐怖
  • また発作が起きるのではという強い予期不安
  • 発作を起こした場所が怖くなる広場恐怖
  • とんでもないことをするのではないかと思う
  • 気が狂うのではないかと思う
  • 大勢の知らない人に囲まれる場所に行くのが怖い

体の症状

  • 頭痛・めまい・ふらつき・気が遠くなる
  • 肩・首筋・背中などが強くこる
  • 身体が震える、しびれが起こる
  • 突然、汗や冷や汗が出る
  • 動悸・突然の息切れや息苦しさ・過呼吸
  • 息切れや息苦しさが突然出て苦しく感じる
  • のどに何か詰まっているように感じる
  • 吐き気・嘔吐

パニック障害を起こす
シチュエーション

パニック障害は、特定のシチュエーションで発作が誘発されやすいことが特徴です。
発作が起こる場面は人によって異なりますが、よく見られる状況としては、混雑した場所や閉鎖空間・逃げにくい場所が含まれます。
具体的には、満員電車・飛行機・高速道路・レベーターといった逃げにくい移動中の状況や、レストラン・映画館・歯科医院・病院・美容院のように長時間その場を離れられない状況で発作が起こりやすいとされています。
また、混雑した場所や逆に誰もいない場所でも、動悸や息苦しさ・立ちくらみ・不安感などの症状が現れることがあります。特に、これらのシチュエーションでは「すぐに逃げられない」「助けを求められない」という恐怖心が強くなるため、発作が生じやすくなります。
さらに、パニック障害は予期しないタイミングで発作が起きることもあります。
例えば、就寝中に突如として不安が襲い、心臓がバクバクして目が覚めたり、そのまま眠れなくなるケースもあります。
これらのシチュエーションに共通しているのは、「逃げることができない」や「誰にも助けを求められない」と感じる場面であり、これらの恐怖がパニック発作を誘発する大きな要因となります。

パニック障害に
なりやすい人の傾向と特徴

パニック障害になりやすい人には、いくつかの性格や性質に共通する傾向が見られます。
研究によると、全人口の約11%の人が一生のうちに一度はパニック発作を経験し、
そのうちの3~4人に1人が発作を繰り返す「パニック障害」に進行することが報告されています。
特徴的な傾向として、特に不安を感じやすい性格や完璧主義、ストレスに対して敏感な人はリスクが高いと言われています。
これらの特徴を持っている人の全てが必ずしもパニック障害を発症するわけではありません。
どのような傾向がパニック障害につながりやすいのかを理解し、適切に対処することが、症状の予防や早期発見につながります。

パニック障害になりやすい人の傾向と特徴
  • 神経質
  • 完璧主義
  • 周囲の目を気にしがち
  • 過労や睡眠不足になりがち
  • 感受性が強い
  • こだわりを強く持っている
  • うつ症状が見られる

パニック障害の
治療について

パニック障害の治療は、発作そのものに対処するだけでなく、再発への不安や避けてしまう場所、
慢性的な体の不調などを克服する根本的なアプローチが重要です。
実際、パニック発作自体は生命の危機を知らせる自然な反応であり、命に関わるものではありません。
しかし、患者さんがこの反応を誤って認識することで、
不安が増幅するという悪循環が生まれ、日常生活に支障をきたすようになります。
例えるなら、脳が「警報器が誤作動しているような状態」になり、
実際は何も起こっていないのに危険を感じてしまうようなものです。
治療ではこの誤った認知を修正し、不安の連鎖を断ち切りながら、根本的な解決を目指します。

藥物療法

藥物療法

パニック障害の薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬による治療が有効です。うつ病を併発していなくてもSSRIは有効であり、パニック発作や予期不安の改善に効果的です。
ただし、パニック障害の患者さんは薬に対して敏感な場合が多いため、治療初期は少量から慎重に開始し、徐々に増量することが一般的です。
SSRIは即効性がなく、効果が現れるまで数週間かかるため、治療の早期段階では急な不安や発作を抑えるために、即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬が一時的併用されることもあります。
この薬は即効性があるものの、依存性のリスクがあるため、慎重な管理が求められ、症状が安定したら段階的に減薬・中止することが理想です。

薬物療法において重要なのは、単にパニック発作を鎮めるだけではなく、「発作が起きても大丈夫だ」と自己効力感を持てるようになることです。
発作時にベンゾジアゼピンを使用して安定させるだけでは、根本的な克服には繋がりませんし、むしろ発作に対する恐怖を助長してしまうこともあります。
パニック障害の治療は、薬に頼らず、自分自身で発作や不安をコントロールできる自信をつけることが最終的な目標です。
このような自己効力感を高めることで、症状の再発を防ぎ、日常生活への復帰をスムーズに進めることができるようになります。

心理療法

心理療法

パニック障害における心理療法は、支持的精神療法・認知療法的アプローチ・行動療法的アプローチなどが有効です。
支持的精神療法では、患者の感情に寄り添い、共感しながら感情面をサポートします。
一方、認知療法的アプローチでは、パニック発作中に体で起きている変化を客観的に捉え、患者がその状態を冷静に客観的に理解できるようサポートを行います。
さらに、行動療法的アプローチでは、避けがちなシチュエーション、苦手な状況や行動に段階的に向き合い、無理のないペースで克服するためのトレーニングを実施します。
またその他の治療法にはグループ療法などがあり、この療法では、同じ悩みを持つ仲間と一緒に呼吸コントロール法や段階的曝露療法、身体感覚曝露を実践します。
仲間と共に取り組むことで支え合い、勇気を持って治療に臨むことができ、非常に高い治療効果が期待できるとされています。
さらに、必要に応じてマインドフルネスや認知再構成法など、個々の患者さんに合った最適な治療法を組み合わせ、より効果的に治療を進めていくケースも見られます。

ご家族・周囲の方へ

パニック障害は、突然の強い恐怖感や体の異常感覚によって、日常生活に大きな影響を与える病気ですが、決して治らない病気ではありません。
まずはこの病気について理解し、焦らず相談しながら治療を続けていきましょう。
適切な治療を行うことで、症状が安定し、日常生活が送れるようになることも十分に可能です。
パニック障害は再発する可能性があるため、再発予防のため、認知行動療法などの治療を気長に続けること・規則正しい生活を心がけること・十分な睡眠を取ること・ストレスを管理することが大切になってきます。
また、誘発物質として挙げられているタバコやコーヒーなどに含まれているカフェイン、アルコールなどの過剰摂取も避けるよう心がけましょう。

最近ではパニック障害への理解が進み、そういう病気があることが理解されつつありますが、家族や周囲の方がこの病気の難しさを理解し、治療をサポートすることも非常に重要です。
家族がパニック障害を理解し、協力することで、患者様は安心して治療に取り組むことができます。
もし身近な方が、以前と様子が違う、何か様子が変だと感じた場合は、早めに当院までご相談ください。

よくあるご質問

不安障害になるとどうなってしまいますか?

不安障害を抱えると、日常生活や仕事など、生活が送りづらくなってしまうことがあります。
不安障害は、強い不安感や不安感情に伴う身体的な症状を引き起されることが特徴です。
症状が引き起こされる場面は人それぞれ異なりますが、例えば外出が難しくなったり、公共交通機関(電車やバス)に乗れない、外食ができない、エレベーターの利用ができなくなる(避けるようになる)などの影響を及ぼしてしまうことがあります。

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不安障害は珍しい病気ですか?

いいえ、不安障害は決して珍しい病気ではありません。
実際には、うつ病よりも多くの人が経験するとされています。

うつ病は成人の約10%前後が生涯に一度は経験する病気とされていますが、不安障害はそれよりも高い、成人の約15%前後が生涯に一度は経験する病気と報告されており、うつ病と比べても高い割合を示しています。

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不安障害はどんな症状が出ますか?

精神的な症状
持続的な不安感・落ち着きのなさ・過敏さや集中力の低下など、日常から過度の不安・心配が6か月以上続くことが多く、慢性化する傾向があります。

身体的な症状
頻繁な頭痛や頭が重く感じたり、首や肩のこり筋肉の緊張を感じることがあります。
また、手や体が震える・心臓の動悸・汗やめまい・呼吸困難の頻繁・下痢・疲れやすく、夜間に眠れないことが続くなど様々な身体症状が現れます。
これらの身体的症状が原因で他の病気を疑い、何度も診察や検査を受けることがありますが、特に異常が見つからず、気づいた時には慢性化しているケースもあります。

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社会不安障害(SAD)とパニック障害の違いは何ですか?

社会不安障害(SAD)とパニック障害は、どちらも社会生活に支障をきたす病気ですが、その発症の仕方や症状には明確な違いがあります。

社会不安障害(SAD)は社会不安障害は、他人と接する場面で強い苦痛や不安を感じる病気です。
他人と話すことや人前に出ることに対して過度の不安や恐怖を感じる、特に人前での行動が苦痛の原因となり、その状況を避けるようになるなど対人恐怖が主な発症原因です。

一方、パニック障害は、予期せず突然の発作が特徴です。
特定の場所や時間に関係なく、突然強い動悸や息苦しさなどの発作が起こります。
発作は数分から数十分続くことがあり、その発作を経験した場所や状況を避けるようになりますのが特徴です。
また、発作が起こる場所に関係なく発症するため、電車やバスなどの公共交通機関やエレベーターなど、特定の状況を避けるようになることがあります。
発作が予期しない場面で起こるため「また発作が起きるのではないか」という予期不安が生じ、生活全般に影響を及ぼすことがあります。

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社会不安障害(SAD)の原因は何でしょうか?

社会不安障害(SAD)の原因については、遺伝的要因・生物学的要因・心理的要因・環境的要因など様々な要因が複雑に絡み合っています。
遺伝的な要因の関与としては、家族に同様の症状を持つ人がいると、発症リスクが高まることがあります。
生物学的要因としては脳内の神経伝達物質(例えばセロトニンやノルアドレナリン)のバランスの崩れが、過剰な不安感や緊張感を引き起こすとされています。
また、過去のトラウマやストレスなど社会的な場面でのネガティブな経験が影響を与えることがあり、このことから心理的要因も社会不安障害の発症に関与していることが伺えます。
社会的なプレッシャーや対人関係の問題、過度の期待や批判的な環境的要因も発症につながる可能性があります。

この病気は、発症年齢が若い傾向にあり、主に思春期の10代半ばに発症すると言われています。
進学や卒業が困難になることから始まり、就職や地域との交流が難しくなるなど、負の連鎖が学生時代から起こり、社会生活に大きな支障をきたすことがあります。
治療を行わずに放置しておくと、一生涯にわたって影響が及ぶ可能性があるため、症状が進行する前に専門的なサポートを受けることが大切です。

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パニック発作が起きた場合、どうしたらいいでしょうか?

1. 腹式呼吸を行う
まずは、できるだけ深く、ゆっくりと呼吸をすることが重要です。
焦って浅い呼吸をするよりも、鼻から息を吸い、お腹を膨らませるように呼吸をしましょう。

2. 息を吐くことを意識する
パニック発作の時は、過剰に息を吸い込みやすく、呼吸が不安定になります。
大切なのは、吸うことよりも吐くことに意識を集中させることです。
息をできるだけゆっくりと長く吐くようにすると、体内の酸素と二酸化炭素のバランスが整い、自然な形で息を吸うことができるようになり、呼吸が楽になってきます。

発作時には焦らず、可能な限りリラックスすることを心がけましょう。
無理に不安を消そうとするよりも、「この発作は一時的なもの」と自分に言い聞かせ、出来るだけ安心することが大切です。
また、家族や友人が近くにいる場合は、話しかけてもらったり、そばにいてもらうことで安心感が生まれ、発作の不安や苦しさを和らげることができます。

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パニック障害だと言われました。治療のために、どのような生活を送ったら良いでしょうか?

パニック障害は、生活リズムが乱れると症状が悪化しやすいため、規則正しい生活が症状の改善に繋がります。

①毎朝同じ時刻に起きて、朝日を浴びる
毎朝、決まった時間に起きて朝日を浴びることで、体内のリズムが整い、心身が「一日が始まる」というサインを受け取ります。
これは自律神経のバランスを改善し、ストレスを軽減するのに役立ちます。
できる限り休日でも同じ時間に起きるよう心がけましょう。

②規則正しい食事を心がける
1日3回、規則正しく食事を取ることで、体のリズムも整います。
特に、朝食は1日の始まりを知らせる重要な要素です。
カフェイン(コーヒーなど)やアルコール、ニコチンは、パニック発作を引き起こしやすくする可能性があるため、過剰に摂取しないように心がけることも大切です。

③昼間は、無理のない範囲で外出や軽い運動をする
昼間に適度な運動を取り入れると、昼と夜の区別がつきやすくなり、睡眠の質も向上します。
外出してウォーキングや軽い運動などで20分程体を動かすと昼夜のメリハリがつき、心身のリフレッシュに繋がりますが、不安感が強い場合は無理をせず自分のペースで行ってください。

④できるだけ人に会い、話す機会を持つ
人と会い、会話をすることも、生活リズムを整え、心のバランスを保つのに役立ちます。
家族や友人と軽い雑談をするだけでも気分転換になり、孤立感を解消することができますので、できる限り積極的にコミュニケーションを取ることを心がけましょう。

以上を参考に、朝の起床・規則正しい食事・昼間の外出・人との会話などで、焦らず少しずつ生活リズムを整えていきましょう。

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家族がパニック症と診断されました。どのように対応したらいいのでしょうか?

家族がパニック障害と診断された場合、どのようにサポートできるかが大切です。
パニック障害の症状は非常に恐怖を伴いますが、適切な対応をすることで患者様の安心感を高め、治療のサポートをすることができます。

パニック障害は、突然のパニック発作により呼吸困難や動悸などの身体症状が起こる病気で、患者さんにとっては非常に恐ろしいものです。
家族がこの病気についてよく理解することで、患者様が安心して治療に専念できる環境を作ることが大切です。
また、パニック障害の患者様は、不安が強い時には外出が難しくなり、外に出ること自体が恐怖になることがあります。その場合、無理に外出させるのではなく、安心して過ごせる環境を整えましょう。
外出をサポートする際は、患者様のペースに合わせて、焦らずにゆっくり進めていきましょう。

発作が起こった際には、周囲が焦らずに対応することが大切です。
優しく声をかけ、手を握ったり、安心できる姿勢を取らせてあげてください。
深い呼吸を促したり、楽な体勢でリラックスできるようにサポートしましょう。
患者様にとって、家族の冷静な対応が非常に心強い支えとなります。

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パニック障害になりやすい性格はありますか?

パニック障害になりやすい性格については様々な見解がありますが、決定的な原因はまだ明らかになっていません。
ただし、いくつかの性格傾向がパニック障害と関連していると考えられています。
例えば、内向的で引っ込み思案な性格の人は、他者に気を使いすぎる傾向があり、自己主張を控えがちです。
このような性格の方はストレスを内にため込みやすく、結果的に心身に負担がかかりやすい傾向にあります。
また、不安気質や神経質な性格の方は、日常生活の些細なことに対しても強い不安を感じやすく、身体がストレスに敏感に反応しやすいという特徴があり、パニック障害の発症につながる可能性があります。
さらに、依存的な性格の方もパニック障害を発症しやすいとされています。
自分で決断することに対して不安を感じやすく、他人に頼る傾向が強いと、ストレスがたまりやすく、対処が難しくなることがあります。
また、生真面目で完璧主義の人もリスクが高いとされています。
このタイプの人は、自分自身に過剰な期待やプレッシャーをかけることで、精神的負担が増し、パニック障害を引き起こしやすいとも言われています。

パニック障害は特定の性格だけで引き起こされるものではありません。
社交的で行動的な人でも発症することがあり、性格が直接的な原因とは言えません。
むしろ、パニック発作を経験したことによって、性格や行動が変化するケースも多く見られるため、性格だけが発症の要因ではないと考えられています。

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パニック障害は遺伝しますか?

パニック障害が遺伝するかどうかについては、現時点では明確な答えは出ていませんが、遺伝的な要因が一部関与している可能性が指摘されています。
例えば、一卵性双生児のケースでは、一方がパニック障害を発症した場合、もう一方が発症する確率が20〜40%と言われています。
このことから、遺伝的な影響は無視できないと考えられますが、現時点ではパニック障害の原因となる特定の遺伝子はまだ発見されていません。
したがって、多因子遺伝、つまり複数の遺伝子が組み合わさって影響を及ぼす可能性が高いと考えられています。
しかし、遺伝的要因だけがパニック障害の発症を決定するわけではなく、発症には環境要因も大きく関わっていると考えられています。
例えば親がパニック障害であった場合、遺伝的な要素に加え、家族環境やストレスへの対処の仕方などの生活習慣が子どもに影響を与え、結果的に発症リスクが高まる可能性があります。

現在の医療においては、遺伝要因と環境要因が相互に作用して発症する病気であり、環境要因の影響がより大きいとも考えられています。
ですので、パニック障害が家族にいるからといって必ずしも遺伝するわけではなく、生活環境やストレス管理、家族のサポートや適切なケアが発症リスクを左右する重要な要素となります。

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検査では異常はないのに、どうして息苦しさや動悸が起きてしまうのでしょうか?

パニック障害では、検査で異常が見つからなくても、息苦しさや動悸といった症状が現れることがあります。
これは身体の防御反応が過剰に働いているためです。
通常、私たちが不安や緊張、あるいは危険を感じると、身体は外敵から守ろうとして自律神経が働き、心拍数が上がったり呼吸が速くなったりなどの症状が現れます。
これらは本来、ストレスから逃げたり、外的な危機に対処するための自然な反応です。
しかし、パニック障害の場合、実際には危険のない場面でも、過度の不安や緊張が体に強い影響を与えてしまいます。
これにより、本来危険に対処するために起こる反応が、不必要に引き起こされ、息苦しさや動悸といった症状が現れてしまうのです。
さらに、パニック発作は単なる身体的な症状だけではなく「このまま死んでしまうかもしれない」という強い恐怖感や、どうしようもないほどの苦しさを伴います。
このような経験を一度すると「また発作が起きるのではないか」という予期不安を抱くようになり、その恐怖がさらなる発作を引き起こす悪循環に陥ることもあります。
このように、パニック障害は、心と体が連鎖的に反応してしまう病気なのです。

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